稽古場ルポvol.5|芝居の超弦理論

soccer0596 ケーキを海底のポストへ投函 公演ルポ

ゴールデンウィークの集中稽古&準備期間に、道具や衣装もそろい、本番想定の通し稽古も行われた。
何回か通しで演じていると段取りの不備など調整が必要になる点が明らかになっていく。しかし、それ以上にシーンごとの稽古では見えていなかった関係性や感情の繋がりに気付くことが多い。

bananashooter-keiko5-1
衣装試着中の田代命(左)と美雪(右)

無論、最初に台本を受け取って読むときから各登場人物の関係性や心情の繋がりを考えていくものだ。でも、活字から得る情報よりも自身が体感することで得る情報量の方が格段に多い。各シーンの稽古で得る情報に加えて、それ以上に通し稽古で得る情報量に毎度驚かされる。各シーンの稽古で情報が通して演じることで繋がりが見えて、その繋がりの軌道から新しい情報を得る。
これに衣装や小道具、照明・SE等で彩られることで、更に情報の輪郭が明確になり、小さく見逃していた情報が見えてきて、それをいかに逃さず拾い集めて消化するかが本番を迎えるまでの鍵となる。

bananashooter-keiko5-2
稽古中の里部あずみ(左)と船生礼子(右)

まるで『超弦理論』のようだ。

超弦理論とは物質を構成する最小単位である素粒子は点や粒でなく紐状のものであるという物理学理論。私は物理学は専門ではなく言葉と概要を聞いたことがある程度のものなので、本当の定義をしっかり知りたい方は検索してみて欲しい。

台本を読んだときの情報は「せりふ」という点に見える。台本を読むときは点と点が繋がった線から読みとっていこうとする。演じると点だと思っていた情報は紐であることが解り、それらを解いて束ねてシーンでは太めの紐が出来る。そしてシーンを繋げて演じることでそれらの紐が結びつき絡み合い一つの作品となっていく。絡み合っているから想定外の紐と紐が結びついて、それが新たな現象を生むのだ。

bananashooter-keiko5-3
稽古中の山内はるか

実際の超弦理論とは大きく異なるが、芝居には芝居の超弦理論があることを通し稽古の中で感じていく。複雑な結び目が多い方が面白いのか、以外とシンプルな方がお客様に伝わるのか、『BANANA SHOOTER』における最適解はまだ見つけられてない。

しかし、1つ1つのシーン、芝居、全てのクオリティを上げていくことできっと最適解は見つかるのだ。


芝居の超弦理論
BANANASHOOTER稽古場ルポNo.05

2022年5月13日

文:甘味屋 餡子 (役者)https://twitter.com/raincloud_017

写真:森 弘 (役者)https://twitter.com/jm1jer
   小夜子(役者)https://twitter.com/sayokomBoo


【※この記事はケーキを海底のポストへ投函noteより2022年4月の投稿を転載したものです。】

【公演概要】

ケーキを海底のポストへ投函 vol.4『BANANA SHOOTER』
作・演出=堀伸也
日時:
2022年5月28日(土)
14:00〜 / 18:00〜
2022年5月29日(日) 
13:00〜/ 16:00〜
(いずれも開場は開演時間30分前)
会場:
神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI(多目的プラザ)
(最寄:桜木町駅 徒歩8分)
チケット
※全席自由、当日精算のみ
前売・当日 3,000円
高校生 1,000円