稽古場ルポvol.1|11人いることの奇跡

ケーキを海底のポストへ投函第4回公演 BANANASHOOTER 稽古場ルポ1

今年の全国高校サッカー選手権大会では準決勝まで勝ち進んだ関東第一高校が辞退を余儀なくされた。
その学校の2人の選手にコロナの陽性反応が出たからだ。
サッカーに限らず、新型コロナウイルスにより出場辞退となったスポーツチームはいくつもある。
つい最近あった春のセンバツ高校野球では、選手のコロナ感染により出場辞退した京都国際高校に代わり繰り上げ出場した近江高校が準優勝した、なんてこともあった。
何も予想できないこの時世は、時に小説よりも奇妙なドラマを生む。

ケーキを海底のポストへ投函第4回公演 BANANASHOOTER 稽古場ルポ

基本的にサッカーは11人で行う競技だが、日本サッカー協会の規約によると、やむをえない事情により人数がそろわない場合、最低7人いれば試合は行えるそうだ。
正確には「6人以下だと試合できない」のだが、言い変えればそういうことだ。

ケーキを海底のポストへ投函第4回公演 BANANASHOOTER 稽古場ルポ1-2

実際に長崎の五島列島の最北端にある宇久高校が実際に7人で高校総体に出場した例があるそうだ。
本当は部員数8人だが、1人怪我で欠場、しかし最低人数7人で出場した。
少ない人数の中では誰一人として欠けることができない、試合そのものとはまた違う緊張の中で試合を迎えることになる。

ケーキを海底のポストへ投函第4回公演 BANANASHOOTER 稽古場ルポ1-3

コロナ禍となり早2年。
都内で初感染者が出たのは第2回のケーキを海底のポストへ投函の公演日だった。
楽屋で「都内初感染者だって!」と大騒ぎしたのを今でも覚えている。
あれから世界が一変した。
それは演劇の世界とて例外ではない。
問答無用の大鉈で中止となった公演がいくつもあった。
関係者に感染者が発生し幕が上がることなく終わった舞台がいくつもあった。
それは今でも起こり続けているし、誰もがそれを避ける為に四苦八苦している。
そのために板の上の数を極力減らす公演も少なくない。
もしかしたら、この先は一人芝居が主流になってくるかも知れない。
先のことは誰にも解らない。
ただ、私たちはボールを持って走り続けなくてはいけない。
「こんな時代だから、ヤることに意味がある」なんてことの為ではない。

「そこに立ちたい」「そこに立って表現したいことがある」

そのボールを持っている限り、私たちは走り続けてゴールを目指す。


11人いることの奇跡
BANANASHOOTER稽古場ルポNo.01

2022年4月14日

文:甘味屋 餡子 (役者)
写真:森 弘 (役者)


【※この記事はケーキを海底のポストへ投函noteより2022年4月の投稿を転載したものです。】

【公演概要】

ケーキを海底のポストへ投函 vol.4『BANANA SHOOTER』
作・演出=堀伸也

日時:
2022年5月28日(土)
14:00〜 / 18:00〜
2022年5月29日(日) 
13:00〜/ 16:00〜
(いずれも開場は開演時間30分前)

会場:
神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI(多目的プラザ)
(最寄:桜木町駅 徒歩8分)